メンテナンスのワークショップ

先日、建築家の伊礼さんが設計された「下田の家」で、施主でもある谷口工務店の方々と一緒に、基本的な植物の管理の仕方を学んでもらう機会として、庭のメンテナンスをワークショップというかたちで行いました。あいにくの雨天でしたが、皆さんカッパ姿で参加していただきました。

具体的には下草の整理と樹木の剪定を行いました。込み合っている木の枝の剪定を脚立に登って行います。花の終わった植物の花がらや、枯れた葉を回収しながら、タイムやプラティアなど横に広がっていく植物によって石や砂利が見えなくなっていたので、見えるように切り戻していきました。シャリンバイなどの低木とシランなどの高くなる下草は、ぶつかりあうので、剪定し間引きます。最後に季節の花を足しました。
一口に管理といっても、植物によって対応が変わります。思いっきりが必要な作業もあります。実際に手を入れ、触れ合いながら成長を見守ってあげると、徐々に植物の個性や調子もよく分かるようになると思います。

e0301029_14162412.jpg

e0301029_14154786.jpg

e0301029_14164693.jpg

e0301029_14384742.jpg

どうしてメンテナンスが必要なのか?自然そのままでいいのでは?と訊ねられます。
植物は10年以上放置しておくと、成長の早いものなら50cmの低木が2~3mになり3mの高木が10mの巨木になってしまい、敷地に収まりきらなくなってしまいます。下草も競争して種類が減り、高木が生い茂りすぎると、下草は生えなくなってしまいます。自然の山の中でも、木々が生い茂った場所には下草はほとんど生えません。庭という小さな場所の中では、人の手によって少しずつ様子を見ながらバランスを整えていく必要があります。

庭をつくって間もない頃は今回のワークショップのような形で手助けさせていただきたいと思いますが、お施主様が今回のような下草の整理や、樹木の簡単な剪定・管理をできるようになっていただくと、愛情も湧き、いろんな庭の楽しみ方が発見できて、庭師による画一的な維持管理よりもあらゆる面で良い効果があると考えております。もちろん高所作業や薬剤散布のような専門的な作業はプロの方に頼った方が良いですが、観賞するだけではない、日々庭と共に暮らすパートナーである方々の自らの手と体と五感をつかって楽しみながら育ててもらう庭のあり方こそが、今まで慣例的に庭師によって作り上げられた作品として与えられた庭や定期的に手入れをすることで維持することが目的となってしまった庭から抜け出せる方法ではないでしょうか。庭は日々変化する生き物であり、一番身近な人が見守ってあげられる環境が最適に違いありません。庭を作った人・育てる人・植物3者の間のコミュニケーションをより充実させていくことは健康な庭をつくる上で最も重要な基盤でもあります。

日々の生活の中でほんの少しだけ時間をつくっていただいて、庭に出て、近くで植物の調子を見てもらえれば、刻々と変わっていく庭の表情を楽しむことができます。その中で、庭の使い方や自然との付き合い方を発見していってもらえると、緑の豊かさや外に出ることの気持ち良さがより鮮明に感じられることかと思います。

庭を「維持管理」「メンテナンス」しなければならないという見方ではなく、家を豊かに、美しくしてくれる生き物をパートナーとして育てていくという心持ちで緑と接していただくのが、これからの時代の庭のあり方だと思います。
# by ogino_landscape | 2015-07-21 15:26 | ワークショップ | Comments(0)

新しい原風景

e0301029_1821120.jpg


今季号の『JA98 Landscape in Japanese Architecture』(新建築社)に、荻野のランドスケープについての考え方「新しい原風景」が掲載されています。下記に転載しますので、ご一読ください。本誌では掲載2物件の写真・図面も交えて様々な解説が載っており、他のランドスケープデザイナーの方々の作品とも比較できるため、大変充実した内容になっておりますので、ご興味のある方はぜひご購入いただければ幸いです。↓
http://www.japan-architect.co.jp/jp/new/book.php?book=JA

原風景を再生することをテーマとして、いわゆる「造園」と呼ばれるものづく りをしてきた私にとってランドスケープはより広い概念のように感じる。植物や水・石などの比較的動かしやすくやわらかい素材を扱う造園にとって、建築や土地、背後の山といった揺るがない存在は、想像力を掻き立てる壮大なキャンバスであり、演劇の舞台であり、花を活ける器となる。住宅の庭と同様に、 広域のランドスケープにおいても背景となるものをどう見せるか、あるいはその存在をどのように活かして全体的な風景をつくっていくかをいつも念頭に置いている。そしてその人工的につくられたはずのランドスケープが、建築がつくられる以前からもともとあったように工夫して自然に見せることが、見る人にとって懐かしくも新しい原風景に繋がると考えている。
スケールが変わっても、庭的な思考は変わらない。建築を美しく見せるための アプローチや、建築のプロポーションを際立たせる植栽の濃密・高低バランス、どこにアウトドアスペースを設ければ快適に過ごせるか、建築の影に合わせた植生、風の方向を活かして香りを室内に届けるなど、建築設計と同じように合理的に、感覚的な空間体験をより明快に再現できるように計画している。造形においてもいかに不連続に見せるか、人工性を排除するかを追求し、説明可能な設計の次元にまでフィードバックすることで、自然の姿を炙り出している。 重要なのは既存の環境をできるだけ壊さずに、新たな植生を周囲の景観に溶け込ませることである。そのため建築の輪郭を包み込み、目立たせることなく、 静かに林の中に佇んでいるように見せることを心がけている。かつての吉村順三や村野藤吾といった近代建築の巨匠と呼ばれる建築家たちはひとつのマナーとしてそのようなことを当然行ってきたのではないだろうか。緑が少ない建築の時代もあったが、その回顧や内省が現代で求められているのかもしれない。
また、人工と自然のコントラストは新鮮な驚きを感じさせる。低く水平に伸びるプロポーションの建築に対しては突き抜けるような高木を入れ、シャープなエッジを持つ建築の入隅・出隅には柔らかな樹形の樹木を添えるのも、建築の特徴を浮かび上がらせ、補佐するためである。
海や山のようにどこまでも続いていくような風景をつくることがランドスケープの究極のあり方かもしれない。その広大な風景と日常を結び付けるのが、これからのランドスケープデザインの課題でもある。
# by ogino_landscape | 2015-06-15 18:19 | メディア | Comments(0)

建築知識ビルダーズNo.21

e0301029_1119261.jpg


現在発売中の『建築知識ビルダーズno.21』にて、荻野の特集が巻頭掲載されています。
近年の施工事例を中心に伊礼智さんの設計による住宅をはじめ、建築家・ハウスメーカー・工務店の物件を実例として外構・造園の考え方を紹介しています。写真と矩計図等の図面データも掲載されており、一般の方々にも分かりやすく、プロの方にとっても参考になる内容になっているかと思います。付録の伊礼さんの旅のスケッチ集も味わい深く、大変読み応えのあるものになっています。ぜひご一読ください。↓
http://www.amazon.co.jp/%E5%BB%BA%E7%AF%89%E7%9F%A5%E8%AD%98%E3%83%93%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BANo-21/dp/4767819164

また、発売を記念してトークイベントが大阪で開催されます。ご興味のある方は、どうぞお越しください。詳しくは↓
http://www.xknowledge.co.jp/kenchi/news/2015/05/no21.html
# by ogino_landscape | 2015-06-03 11:27 | 日常 | Comments(0)

庭づくりワークショップについて

今はもう一般的になりましたが、弊社の造園工事では、機会があればプロの職人だけでなく、家づくりに関わる一般の方々も参加する造園ワークショップを行います。つい先日も姫路にて、総合展示場(ヤマヒロ設計施工)のワークショップを行いました。

e0301029_1405367.jpg

e0301029_1422641.jpg

建築やまちづくり等、あらゆる創作の現場でワークショップが取り入れられていますが、短期間で太陽の光を浴びながら汗をかき、身近な人々と達成感を共有できる庭づくりワークショップは、特に都市の中やインドアでの生活を送っている人々にとっては普段できない瑞々しい経験となり、好評をいただくことが多いです。

庭づくりは家づくりのクライマックスでもあり、良い思い出が残る機会でもあります。そこで、お施主様、設計者や工務店の方々、これから庭を守っていく方、時には地域の皆様と一緒に家の竣工記念にもなるような庭を作っていけないかと思い、ワークショップを行っています。その記憶がきっかけとなり、住人にとっては日常的に庭を美しく健康に保つ意識へとつながり、結果として、家に訪れるお客様や通りすがりの人にとって庭が魅力的な家の印象を与えることになってもらえることが、最終的な目標です。

e0301029_1453686.jpg

ワークショップを通して、自然に触れる喜びや庭づくりに関する基本的な知識を体で覚えていってもらうのが、メインの目的です。植物は生き物ですから、庭はできた時が完成ではなく、育てていかなければなりません。そのための基盤づくりに携わることは庭を育てていく上で最も重要な経験かもしれません。理想としては、ワークショップに参加した人々がプロの造園家やメンテナンス業者の力を必要とせずに、自分たちの力で庭を美しく、時には作り替えたりなどのオリジナルのアレンジを加えながら楽しく維持していってもらえるのが、あるべき庭の最高の姿だと思います。

設計者・工務店の方にとっては、植物を植えることでどれだけ建物の表情が変わるかを知ってもらえるとともに、庭を取り込んだ設計も磨きがかかると思います。庭をつくる立場としても、建築と造園の干渉するところを理解してもらうだけで、格段に施工がしやすくなります。
協力してくださる造園業者さんとは、お互いに情報交換ができ、良い刺激をいただいております。今後の庭の管理においても、特に遠方の場合は協力していただくことが多いです。

e0301029_14132081.jpg
e0301029_14132784.jpg

最近では岡山でBaum Style Architect設計のN-house、京都のウッドテックキムラ、岐阜のDNAモデルハウスなどでワークショップをさせていただきました。やはり外で食べるご飯はおいしいです。一生懸命につくった庭で食事をするのは、充実感に溢れているものです。

e0301029_14261624.jpg

大きな木や石を運ぶことを別にすれば、庭をつくるのに資格や免許、難しい知識は必要ありません。植物をパートナーとして付き合っていく意志さえあれば、心地よい庭は誰でもつくることができ、維持することもできます。私たちも庭づくりのプロとして、楽しくアウトドアやスポーツのような感覚で庭づくりができるきっかけをお客様と共有できるワークショップを目指していきたいです。
# by ogino_landscape | 2015-05-12 15:59 | | Comments(0)

イワタニ水素ステーション芝公園 オープン

e0301029_10832.jpg
e0301029_1081042.jpg


http://zuuonline.com/archives/53760
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201504/13iwatani.html

弊社が造園を担当しました、イワタニ水素ステーション芝公園が開所しました。日本初のショールーム併設型の水素ステーションで、都内で初めての商用施設として岩谷産業がオープンしました。(設計・施工=大林組)

隣接する芝公園の緑をつなげること、車道沿いの未来的な風景として庭と建築が一体化して見えることをイメージしながら、造園を計画しました。植枡のデザインに始まり、建築設計・施工の方々と長期間やり取りをし、細部に至るまで綿密に作り上げることができました。実際にご覧いただけると、スピード感がある、建築と樹木のラインの融合が感じられるかと思います。

水素というこれからの新しいエネルギーを発信・供給する施設としてふさわしい、未来の原風景とも言えるような新鮮さと緑の潤い・涼しさが感じられるランドマークとして、これから訪れる人々に印象づけられることを願っております。
# by ogino_landscape | 2015-04-14 11:05 | | Comments(0)


荻野寿也景観設計のブログです。造園・グリーンの工事や管理の様子、植物の情報、参考になる原風景のイメージやインスピレーションを受けた物事などをスタッフがお伝えします。http://www.o-g-m.co.jp/


by ogino_landscape

プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る