新しい原風景

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今季号の『JA98 Landscape in Japanese Architecture』(新建築社)に、荻野のランドスケープについての考え方「新しい原風景」が掲載されています。下記に転載しますので、ご一読ください。本誌では掲載2物件の写真・図面も交えて様々な解説が載っており、他のランドスケープデザイナーの方々の作品とも比較できるため、大変充実した内容になっておりますので、ご興味のある方はぜひご購入いただければ幸いです。↓
http://www.japan-architect.co.jp/jp/new/book.php?book=JA

原風景を再生することをテーマとして、いわゆる「造園」と呼ばれるものづく りをしてきた私にとってランドスケープはより広い概念のように感じる。植物や水・石などの比較的動かしやすくやわらかい素材を扱う造園にとって、建築や土地、背後の山といった揺るがない存在は、想像力を掻き立てる壮大なキャンバスであり、演劇の舞台であり、花を活ける器となる。住宅の庭と同様に、 広域のランドスケープにおいても背景となるものをどう見せるか、あるいはその存在をどのように活かして全体的な風景をつくっていくかをいつも念頭に置いている。そしてその人工的につくられたはずのランドスケープが、建築がつくられる以前からもともとあったように工夫して自然に見せることが、見る人にとって懐かしくも新しい原風景に繋がると考えている。
スケールが変わっても、庭的な思考は変わらない。建築を美しく見せるための アプローチや、建築のプロポーションを際立たせる植栽の濃密・高低バランス、どこにアウトドアスペースを設ければ快適に過ごせるか、建築の影に合わせた植生、風の方向を活かして香りを室内に届けるなど、建築設計と同じように合理的に、感覚的な空間体験をより明快に再現できるように計画している。造形においてもいかに不連続に見せるか、人工性を排除するかを追求し、説明可能な設計の次元にまでフィードバックすることで、自然の姿を炙り出している。 重要なのは既存の環境をできるだけ壊さずに、新たな植生を周囲の景観に溶け込ませることである。そのため建築の輪郭を包み込み、目立たせることなく、 静かに林の中に佇んでいるように見せることを心がけている。かつての吉村順三や村野藤吾といった近代建築の巨匠と呼ばれる建築家たちはひとつのマナーとしてそのようなことを当然行ってきたのではないだろうか。緑が少ない建築の時代もあったが、その回顧や内省が現代で求められているのかもしれない。
また、人工と自然のコントラストは新鮮な驚きを感じさせる。低く水平に伸びるプロポーションの建築に対しては突き抜けるような高木を入れ、シャープなエッジを持つ建築の入隅・出隅には柔らかな樹形の樹木を添えるのも、建築の特徴を浮かび上がらせ、補佐するためである。
海や山のようにどこまでも続いていくような風景をつくることがランドスケープの究極のあり方かもしれない。その広大な風景と日常を結び付けるのが、これからのランドスケープデザインの課題でもある。
by ogino_landscape | 2015-06-15 18:19 | メディア | Comments(0)


荻野寿也景観設計のブログです。造園・グリーンの工事や管理の様子、植物の情報、参考になる原風景のイメージやインスピレーションを受けた物事などをスタッフがお伝えします。http://www.o-g-m.co.jp/


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